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サミット/2年半で既存店客数7.6%増、竹野社長が語る成長の秘密

2019年01月28日 17:30 / 流通最前線トップインタビュー

サミットの業績が好調に推移している。2019年3月期中間決算(単体)は、売上高1357億1000万円(前年同期比3.2%増)、営業利益37億6200万円(2.5%増)、経常利益40億1400万円(3.0%増)、当期利益27億8500万円(11.6%増)となり、売上・利益共に過去最高を更新した。

2016年からの2年半で既存店の売上高は10.5%増、客数は7.6%増となり、客数減少に悩む小売業界の中で異例の数値を出している。事業ビジョンとして「サミットが日本のスーパーマーケットを楽しくする」を掲げ、サミットを率いる竹野浩樹社長に、好調な業績を生み出したコンセプトや現場の取り組みを聞いた。

<竹野社長>
竹野社長

――中期経営計画の中でうまくいった施策と現状の課題を教えてください。

竹野 今年は全体施策と個店施策を織り交ぜて、総買上点数を上げるのが大きなテーマだった。2017年、中計最初の年は、客数を上げた。2018年は一段階ギアが上がった。

3年で見ると、2019年は、その仕上げの年になる。今のところ2018年の4~10月までの累計既存店売上高は3.5%増と悪くない数字で、施策が当たっていると思う。

当社では、「成長ストーリー」という会社を理想的に動かす仕組みを作った。

一つ目が「集客策を進化させよう」、二つ目が「オリジナリティーの発揮でさまざまなお客様のニーズに答えよう」、三つ目が「ハイタッチな接客で、期待を超えるサービスをお客様に与えよう」、四つ目が「サミットファンになってもらうことをやろう」というものだ。

四つの施策の中で、それぞれ個別の施策があり、各部署、各店で、みんなが施策をやり続けている。

場合によっては、パートさんであっても、「自分の範囲の中で、これはいいと思ったら、どんどんやりなさい」と言っている。絵心があるから、POP研修に出てPOPを書いてる人もいる。みんなが自分がやれる中で、いろいろなことが自発的にちょっとずつ動き出している。

全体施策、個店施策のほかに、みんなのモチベーションとか、共有力のレベルが上がった点が、多分、同業他社に比べて、ちょっと良かった。この差がこの結果になっている。

なので、何の施策が当たったとか、チラシの値段を下げたからお客さんが来たとか、単純な話ではなく、二年間やってきた合わせ技が、成長のエンジンになっている。

――中計3年目の方針は。

基本的には3年目は総仕上げで、もっと共有力を上げたい。課題は何かというと、月並みに言えば、「人」問題であり、もう避けて通れない。

課題として、やれていないのは、従業員を保持すること、今いるパートさんなり社員が辞めないようにすることだ。私たちがパートさんを、「パートさん」と呼んでるうちはダメだと思う。

「何々さん」って呼べるようになって、会社の中でお互いを認め合う、リスペクトする社風を作っていく。店長という職位はあるが、ほとんど、「何々さん」付けで呼んでいる。そういったことを実践しながら、従業員を保持する力を上げたい。

従業員に、会社の成長を全面に打ち出すとおかしなことになるので、「一緒に戦っている」、「お金だけじゃなくて、時給だけじゃなくて、自分の成長を会社の資産を使って楽しんでみたらどうですか」といったような切り口でできればいいなと思っている。

<施策を解説する竹野社長>
施策を解説する竹野社長

――来期の重点課題、共有力を高めるための施策はなんですか。

竹野 2019年は、3年間の中計の仕上げの年になる。オンリーワンというか、オリジナリティーを発揮して特別な存在になることを目指している。

リスペクトする社風とか、共有力とか、会社の底力を見せるところを強化する。もっともっとお互いを知ったり、お互いをリスペクトするということをやり続ける。

具体的には、お店で通り過ぎたら、挨拶するとか、社員同士が仲良くなるとか、お客さんとハイタッチするとか、いろんなことをやっている。

成功事例の一つ一つを、褒めて、認めて、それを共有することを、本当にコツコツやり続けている。

――客数を上げる施策には、どんなものがありますか。

面白チラシをやって、「やっぱり行くんだったらサミットかな」と思ってもらう仕掛けがある。

店舗には、案内係がいて、おじいちゃんやおばあちゃんと「元気だった」とか声をかけてしゃべって、帰ってもらい、「また行きたくなる店」にしている。

こういったさまざまな、エッセンスが店にあることで、本当に、コミュニティになることを目指している。これが、お客様の数がいま増え続けている要因だと思う。

接客レベルをあげている要因もある。今までは、案内係だけだったかもしれないが、少しずつ、お客様に向き合える社員が出てきた。

お店によっては時間を決めて話をしたりとか、いろんなことをみんな自分たちで考えるようになってきた。

細かくいうと、実は誰でもできることをやっている。それをやり続けられるか、徹底できるか、共有できるか、というのが勝負で、それをやっている。

<案内係>
案内係

――案内係の狙いを教えてください。

案内係は、フレンドリーな接客、ハイタッチな接客を行っている。心のこもった、「おじいちゃん、どうだった、生きてた」なんてことをやってる。

大体、40人くらいの案内係がいて、毎日レポートが上がってくる。何が怒られたとか、何が足りなかったとか、ロカボのパンが欲しいとか、細かくお客様の毎日の声を拾い上げている。

店舗では、ブラブラしてる案内係がいて、「お試しください」(試食専門コーナー)があり、「一体、どうなってるの」と思うが、近所の井戸端会議みたいな会話が、財産となっている。

――ハイタッチな接客とは。

竹野 ハイタッチというのは、心と心が通うということだ。これは、Give me five!(高く上げて広げた手を相手の手と打ち合わせる)ではない。

心と心が通じ合う接客をハイタッチな接客と呼んでいる。つまり、お客様が今日は元気なさそうだったら、「どうしたんですか?」と言える。食べ物のことで分からなかったら、「これはこういうことです」と教えて差し上げられる。

「こういう食べ方あったわよね」とか、「昔、こういうのを食べてたよね」とか、「地元というのは、こうやって食べてたの」とか、情報を伝えることもハイタッチな接客につながっている。

――2019年の消費環境をどうみていますか。

竹野 来年を一言で予測すると、多分、「まったく想像できない2019年度になる」と思う。

消費税の増税が、期中に起こる。そこに軽減税率ということが入ってくる。そこにキャッシュレス決済のポイント還元も入ってくる。つまり消費が複雑になって、お客様が大混乱すると思う。大混乱は、いい方の大混乱だと私は信じたい。

現天皇陛下がご退位され、新天皇陛下が即位される慶事があり、これで10連休が起こる。喪がなくて、喜びでつながる慶事をどうやって乗り越えるのか、我々、小売業にとってプラスになるが、どこまでやっていいのか分からない。

楽しみもあり、不安もあるのが前半、後半は、ブルーになりすぎる消費税問題がある。

――慶事に対して施策はあるのか。

竹野 基本的には淡々とやる。10連休あって、みんな海外に行くかというと、そうはならない。ちょっといいものを食べようだとか、みんなで集まろうとか、どういう行動になるのか。

多分、シンクタンクとかいろんな人たちが予測するので、予測をうまく吸い取りながら、初めての慶事を迎えるしかない。

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