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TOUCH TO GO/無人決済システム店舗、来期は倍増となる80店舗オープンを目標

2024年03月22日 17:43 / 店舗レポート

無人決済システム店舗「TOUCH TO GO」を展開するTOUCH TO GO(TTG)が、順調に店舗を拡大している。2021年2月にファミリーマートと資本業務提携をしたのをきっかけに、全国に店舗網を拡大。ファミリーマート以外にも、出店を重ねて、2020年3月の1号店「TOUCH TO GO 高輪ゲートウェイ駅店」を皮切りに、TTGが展開する無人決済システム店舗は、約80店に拡大した。4月から始まる来期は、出店ペースを拡大し、店舗を倍増させる目標を掲げている。今回、TTGを率いる阿久津智紀社長に、無人決済システム店舗の展望を聞いた。

※無人決済の仕組みは、天井に設置されたカメラの情報と商品棚に設置した重量センサーを活用して、入店客と手に取った商品をリアルタイムに認識する。商品を持ち、出口付近に設置した決済端末に向かうと、決済端末のディスプレイに購入商品と合計金額が自動で表示されるため、商品バーコードを読み込む作業なしで会計できる。

<阿久津社長>

――日本国内では無人決済システム店舗はあまり拡大していませんが、出店目標を教えてください

阿久津 4月から始まる来期は、約80店の出店を見込んでいます。1号店から数えて、この4年間で80店を開店しました。いまは、無人決済システム店舗を利用する機会が増え、認知度も拡大しています。また、無人決済システム店舗をお披露目する場も増えています。ファミリーマートの力も借りて、店舗を拡大したいと思います。

――いま無人決済システムは何アイテム程度の店舗まで対応できますか

阿久津 技術的には、ファミリーマートの通常のコンビニを無人決済システム店舗化することはできます。2022年11月28日に兵庫県伊丹市の伊丹市役所にオープンした「ファミリーマート伊丹市役所/S店」の品ぞろえは約2000種類になっています。

現状では、TTGの仕組みでは、ファミチキのようなカウンターファストフードが扱えないといった制約はありますが、フルサイズのコンビニを無人決済システム店舗化することは可能です。あとは、費用対効果の問題ですね。

――羽村駅の無人決済システム店舗のアイテム数は350ですね

阿久津 「ファミリーマート羽村駅/S店」は、元々、JR東日本のグループ会社が、ニューデイズを運営していた小さな店舗です。店舗面積の制約もあり、採算に課題があり閉店しました。今回、TTGの仕組みを使い、ファミリーマートの既存店と母店・子店方式とすることで、採算が取れると考えています。これまでの経験から駅構内での売れ筋商品だけをそろえています。遊休地を有効活用する施策ともなっています。

<ファミリーマート羽村駅/S店>

――商品供給の仕組みについて教えてください

阿久津 物流は既存のファミリーマートの仕組みを活用しています。無人決済システム店舗まで商品を運んでもらい、母店の従業員が実際に無人決済システム店舗に来て品出しを行っています。商品発注端末も無人決済システム店舗に備えており、通常店舗と同じように、従業員が無人決済システム店舗で発注業務を行います。お客様が混み合う前に店舗の準備をしてしまう仕組みで、来客数が増えて人を増やす必要がないオペレーションなので、省人化につながっています。

――無人決済システム店舗は、一度にたくさんの人が来たら対応できますか

阿久津 JR青梅線羽村駅は、乗降客数が少ない駅ですが、TTGとファミリーマートが資本業務提携して出店した1号店「ファミマ!!サピアタワー/S店」は、東京駅に隣接しています。そういった立地でも、対応できています。

――客数で見ると1日、何人くらいまで対応できますか

阿久津 TTGの店舗は基本的に2台の決済端末を備えていますが、一番、売れている店舗だと、2台で1時間あたり200人さばく店舗があります。いまは、客数が多すぎて、店内のお客様を補足できないことはなくなっています。大体、決済端末1台あたり、1時間で80人~100人に対応できるようにしてあります。「ファミリーマート羽村駅/S店」は、決済端末を3台に増やし、レジ回転数を上げる施策を取り入れています。

<ファミリーマート羽村駅/S店の決済端末>

――無人決済システム店舗が利用される時間帯の特長を教えてください

阿久津 駅構内の立地だと、やっぱり通勤・通学時間帯の朝と夕方にピークがありますね。立地特性を考えて、「ファミリーマート羽村駅/S店」は、はじめて3台の決済端末を入れました。オフィス、工場、商業施設の従業員休憩室、大学や病院内にも出店しているので、朝・夕方に加えてお昼時の利用が多いです。売れ筋商品についは、通常の店舗と変わりはありません。

――出店に向いている立地は

阿久津 基本的には、デッドスペースですが、これまで出店している駅、高速道路のパーキングエリア、観光案内所など、そもそも人が集まらなくて長時間空けるニーズがある場所です。あとは、従業員休憩室のような職域です。工場とか、働く人の食事時間が異なる場所などは、ニーズが高いと見ています。

――他の無人決済システムを提供する企業と比べて、TTGのシステムの優位性を教えてください

阿久津 一つは、会員登録なく使えるという点です。不特定多数を対象に、衝動的使われる店舗だと、会員登録してまで買い物をするハードルは高い。フリーで使えるというメリットがあります。もう一つは、取り扱い商品も通常コンビニと同じように品ぞろえできる。売場づくりがしやすい。最後に、路面店のコンビニに比べると売上は高くない立地であっても、収支があうコストココントロールができる。この3つが優位性だと思います。

――システムを導入する上でのハードルはありますか

阿久津 ファミリーマートでいま36店を出店し、東急ストアも3店舗の無人決済システム店舗を出店しています。いま、導入コストについては、特に問題になっていないと思います。人を検知するカメラやセンサーにはお金がかかるので、店舗を大型化するときは、課題かもしれません。コスト的には、元々、2人か3人の人件費がかかるところを1人分くらいで運営できる仕組みを目指しています。一人分の人件費よりも安く運営できるコストを目指しています。

<天井のカメラが顧客と商品を補足>

――コストダウンの取り組みは

阿久津 カメラについては、初期のころは、真下にカメラを向けていましたが、いまは斜めにカメラを向けることで画角を広くすることで、カメラ台数を減らして、コストダウンをしています。一方で、商品棚の重量センサーは継続しています。カメラ単独では、商品棚の奥から商品を取ったりすること完全には把握しにくい。カメラと重量センサーを併用することで、無人決済システムの精度を高めています。

――無人決済システム店舗の母店はファミリーマートの直営店のみですか

阿久津 ファミリーマートの直営店とフランチャイズ加盟店の両方の仕組みがあります。無人決済システム店舗の売上は、母店の売上になるので、フランチャイズ加盟店の収益拡大にもつながっています。

――アマゾンゴー縮小や中国での無人決済店舗の苦戦が報道されています。どう分析してますか

阿久津 一つは、小売業なので品ぞろえの魅力が必要です。中国の店舗を視察すると商品の品ぞろえに課題があるように感じました。やっぱり加工食品だけの店舗では魅力がない。あとコストの課題があります。アマゾンゴーについては、システムの投資コストが高いと思います。生鮮食品を含めてフルラインのスペックで対応するには、やはり高コスト構造になってしまいます。

一方で、イギリス、デンマーク、ノルウェーといったヨーロッパ、北欧では、無人決済店舗は増えています。人件費が高騰していることに加えて、人を深夜に働かせることに厳しい規制があったり、日曜日に休む必要があったりといった社会的な背景があります。

<ファミリーマート羽村駅/S店の店内>

――日本国内では、無人決済システム店舗が急速に拡大しない要因は何ですか

阿久津 まだ、人手をかければ店舗が運営できる状況だと思います。ただ、人件費が上がってきているほか、人が募集しても集まらない状況もある。どこかで時代の流れは変わると思う。ポーランドでは、大手小売業のZebkaが無人決済システム店舗を80店ほど運営しています。

――万引きの問題はありますか

阿久津 これまでの実績だと、実店舗よりも不明ロスは少ない結果となっています。バーコードを読み込む作業がないので、打ち間違いがなく、お客様も手に持つだけで会計ができる。あと、カメラがいっぱいあるので、それが抑止効果になっているようです。

――カメラで監視されているような感覚が嫌だという声はありますか

阿久津 あまりないですね。商品をスキャンする必要がないので、クイックに買い物ができるとか、ずっと店舗が開いているとか、そういった利便性を評価していただける声が多いと感じています。お客様の負荷を削減する面が評価されています。

――システムの進化について教えてください

阿久津 マーケティングの基盤ができつつあります。入店しても何も買わないお客様の導線を見たり、一度手に取っても買わなかったり、POSデータだけでは分析できないことを見れるようにしています。あとは、デジタルサイネージを活用した販売促進の実証実験を行っています。

■阿久津智紀氏の略歴
1982年、栃木県生まれ。2004年専修大学法学部卒業後、JR東日本へ入社。駅ナカコンビニNEWDAYSの店長や、青森でのシードル工房事業、ポイント統合事業の担当などを経て、ベンチャー企業との連携など、新規事業の開発に携わる。2019年7月から現職。

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