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中村屋/コンビニ向け「中華まん」定番強化で奇をてらわず

2019年01月15日 15:40 / 流通最前線トレンド&マーケティング

中村屋は1月14日、埼玉県入間市の武蔵工場で開いた中華まん戦略発表会で、コンビニ向け中華まんの商品開発では奇をてらわず、定番商品の品質向上に注力する方針を明らかにした。

<中村屋の中華まん>
中村屋の中華まん

中華まん市場は、毎年成長を続けているカテゴリーで、主要取引先の一つである大手コンビニでも冬の中核商品となっている。

定番商品のほか、形を変えただけでなく、色合いのあるビジュアル的に形を変えた中華まん、蒸し工程に加えて焼き工程を加えて風味を出した中華まんなど、さまざまな中華まんが、コンビニ各社から発売されている。

中村屋は大手コンビニに、肉まん、あんまん、ピザまん、カレーまんなど定番商品を供給しており、今冬の商品も定番を強化している。

取締役兼執行役員の伊賀義晃FF事業部統括部長は、「肉まんのバラエティーが拡大しているが、当社はビジュアル的な商品開発の方向にはいかない。焼きの工程については、当社も10年以上前に挑戦しているが、焼いた風味、食感が出ないため、現時点では検討としていない」と述べた。

「カレーまん、チーズまんなど定番はやや飽きられてきている感じもあるが、当社として、豚角煮まん、餃子まんなど、料理のおいしさそのものに着目し、具材のおいしさにこだわった商品開発をしたい」という。

<伊賀FF事業部統括部長>
伊賀FF事業部統括部長

今冬の中華まんのトレンドは、ジューシー感、生地ふっくら、もちもち感だという。

コンビニ向け商品では、新たに新工場を設立したほか、手包み製法を実現する新ラインを設置したほか、原料の見直しを実施した。

生地には、新たにカナダ産の強力粉を加えてもっちり感を出したほか、具材には塩づけの豚のうで肉を使用し、豚肉と相性の良い昆布だしを隠し味に加えて、うまみを向上させた。

2007年に中村屋新宿本店で、手包みの肉まんの実演販売を行ったところ、評判になったこともあり、従来のラインでは実現できない食感を生み出す、手包み製法のラインの開発に着手した。

約5年前に、手包み製法の技術を確立し、昭和40年代初頭まで行っていた手包み製法による中華まん製造を、機械化した。

<武蔵工場>
武蔵工場

武蔵工場は2018年7月に竣工し、投資額は建物と設備で約100億円。更なるおいしさの追求に対応した自由度をもった発展可能な設備をテーマとした。

今後、例えば、大きな中具である、豚の角煮、チャーシュー、卵などの料理をそそのまま包む。あるいは、現状の中華まんの形である丸にこだわらない、新しい形状、長方形や半月状の成型を行うなど新しい商品開発にも取り組みたいという。

武蔵工場の敷地面積は約8万3000m2、延床面積は1万7648m2、工場面積は約1万5000m2で、1日あたり約40万個の生産能力を持っている。

建物規模は、縦約65m・横約200m・高さ約10mで、横に長いのが特徴。原材料の投入から最終製品化までを、可能な限り直線のラインで構成することで、生産効率を高めた。

<中華まんの製造ライン>
中華まんの製造ライン

工場内での原材料や半完成品、完成品の搬送などに自動搬送機を導入するなど、可能な限り省人化を実施した。従業員数は約90人で、既存の工場の約半分、旧来型の工場の約3分の1の人員でも稼働できる体制を整えた。

中村屋では、現在5つの工場を稼働させている。神奈川工場(神奈川県海老名市)は菓子・中華まん、食品工場(神奈川県海老名)はレトルト・冷凍、埼玉工場(埼玉県久喜市)は菓子・中華まん、つくば工場(茨城県牛久市)は中華まん、武蔵工場は中華まんを製造している。

現在、武蔵工場は、大手コンビニ向けの「本格ジューシー肉まん」「こだわりの特製肉まん」の2アイテムのみを製造し、首都圏エリアはチルド、北海道から九州までの遠方エリアは冷凍で、全国に商品を供給する。武蔵工場が稼働したことにより、中村屋の中華まんの製造能力は約30%増加した。

中華まんの需要は冬季に集中するため、5月から8月は、武蔵工場の操業を停止する予定で、夏季の工場の稼働率の向上が今後の課題となっている。

2018年は、夏専用のピリ辛肉まんとして、スパイシーカレーまんを販売して、コンビニの取り扱いが伸びたが、まだ、大きな数字にはなっていない。

今後は、家庭で中華まんを食べる需要も増えると予測しており、チルドのほか、冷凍でも電子レンジで温めるだけで、店頭と同様なおいしさを出せる商品開発を目指したいという。

<中華まんミュージアムを併設>
中華まんミュージアムを併設

武蔵工場には、日本国内では初めてとなる中華まん工場の常設見学施設として「中華まんミュージアム」を設置。幼稚園から小学生くらいまでの子どもを持つファミリー層をターゲットに、年間で一般客約6000人、地域・取引先約3000人、合計9000人の来館を目指す。

中華まんミュージアムは、「シアター」「工場見学」「おいしさゾーン」「キッチン」の4つのゾーンで構成する。シアターでは、中華まんと中村屋の歴史を学び、工場見学では、具を生地で包む工程、発酵させて蒸す工程、包装の工程、検査など中華まんの製造工程を順番を巡って見学できる。

<工場見学の様子>
工場見学の様子

おいしさゾーンでは、中華まんの具材を組み合わせていくパズル形式のゲームなど、親子で楽しみながら中華まんを理解できるアトラクションを設置した。キッチンでは、武蔵工場で製造された「肉まん」の試食ができる。

鈴木達也社長は、「ECサイトの台頭もあり、メーカーとお客様が直接触れ合う機会が減少している。直接的なコミュニケーションができる施設として、中華まんミュージアムを作ることで、商品や企業に対するファンづくりをしたい」と語っている。

<鈴木社長>
鈴木社長

武蔵工場の概要
所在地:埼玉県入間市大字狭山台字武蔵野234-1
規模:地上2階建
延床面積:1万7648m2
敷地面積:約8万3000m2
投資総額:約100億円(建物・設備)
生産品目:中華まん

中華まんミュージアム概要
オープン日:2019年1月25日
所在地:埼玉県入間市狭山台234(武蔵工場内)
TEL:04-2935-1592
休館日:水、木曜日、年末年始、工場休業期間
案内時間:10時~、14時~(所要時間90分)
定員:完全予約制、各回20名(最少遂行人数2名)
入場料:無料

■中華まんミュージアム
https://www.nakamuraya.co.jp/factory/

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