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アークス、バロー、リテールP/「新日本SM同盟」結成、独立系スーパーに参加要請

2018年12月25日 20:58 / 経営

アークス(本社:北海道)、バローホールディングス(岐阜)、リテールパートナーズ(山口)の3社は12月25日、「新日本スーパーマーケット同盟」と銘打つ戦略的な資本業務提携を発表した。

<新日本スーパーマーケット同盟>
新日本スーパーマーケット同盟

人口減少や少子高齢化を受け、地方ローカルスーパーマーケットの経営環境が厳しくなっていることに対応した施策。

これまでの経営統合を前提とした連携とは異なる、新たな枠組みの資本業務提携を築くことで、各社が持つ知恵やノウハウ、業態を結集し、新たな地方スーパーマーケットの成長戦略を支援する取り組み。

<アークスの横山社長>
アークスの横山社長

アークスの横山清社長は、「スーパーマーケット業界に関わって58年目になる。これまでは大手が来る、生協に対抗するといった競争だったが、リアルとバーチャルなどこれまでとは違う競争が生まれている。地域No.1では通じない、規模の利益だけでも勝てない状況がある中で、業界No.1の小売業がすばらしい中期経営計画を出した。地方スーパーはどうするのかを考えて、北海道、中部、九州と列島を横断する連携を実現した」と提携の趣旨を説明した。

<バローHDの田代社長>
バローHDの田代社長

バローHDの田代正美会長兼社長は、「これまで単独で成長してきたバローがなぜ入っているのかという質問を記者から受けた。スーパーマーケットは、百貨店の次に古い業態で、閉塞感があり、将来への方向性がない。スーパーは食文化を支える存在だが、環境変化もあり、このままでは独立系スーパーがダメになってしまう。明治維新150周年という時代の変わり目に、独立系スーパーが、どこかのグループに入る受け皿としたい」と語った。

<リテールパートナーズの田中社長>
リテールパートナーズの田中社長

リテールパートナーズの田中社長は、「スピード経営が必要な中で、企業規模の拡大が必ず必要となっている。九州には、まだ会社ではなく家業といった形の独立系スーパーも多いが、この正月の間にそれぞれの企業で、新日本スーパーマーケット同盟への参加を考えて欲しい」と述べた。

現時点では、経営統合は想定しておらず、商品仕入れの統合もシステム統合も検討していない。

各社が持つ、業態開発のノウハウや食品スーパー以外の業態、連邦経営のノウハウなど情報交換を通じて、新日本スーパーマーケット同盟への参加企業が主体性をもって成長できる取り組みをサポートする。

既存事業領域の強化では、地場商品や産地情報、取引先情報の相互共有、資材・備品・什器などの共同購入、店舗開発・店舗運営、物流センター運営、人材採用や人材教育に関するノウハウの共有のほか、スポーツクラブ事業などの小売周辺事業の共同展開を想定している。

田代社長は、「当社が展開するスポーツクラブやペットショップなど、情報交換をすることで、全国展開が可能になる。バローグループとしても成長にもつながる」という。

田中社長は、「自社が運営するショッピングセンターにバローが運営するスポーツクラブやペットショップなどが出店すれば、よりお客にとって魅力ある施設にできる」と相互のメリットを解説した。

次世代に向けた取り組みとして、カード事業の共同研究、統合に向けた検討、バックオフィス業務の統合も含めた共同研究、金融、決済事業に係る共同運営の検討、スマートストア(次世代型店舗)など新たなテクノロジー対応への共同研究などを想定している。

田代社長は、「カード事業は当社の売上規模では、コスト部門となっており、利益がでない。将来、金融分野に小売業として進出するには、売上高で3兆円程度の規模が必要だと考えている」と述べた。

横山社長は、「キャッシュレス社会の先には、カードレス社会があり、その到来は早いかもしれない。スマホ決済、QR決済など新しい決済の仕組みもある。3社で新しい仕組みに挑戦したい」と語った。

資本業務提携の名称を「新日本スーパーマーケット同盟」とした理由について、横山社長は、「私が会長を務める新日本スーパーマーケット協会が、全国スーパーマーケット協会に名称変更したため、この名称を使う団体がない状態となっていたため、新日本スーパーマーケット同盟とした」と述べた。

<アークスの三浦会長>
アークスの三浦会長

アークスの三浦紘一会長は、「まったく構想段階だが、近年は天候不順による野菜の高騰が問題となっている。売上規模を拡大することによって、野菜工場をグループで運営することも可能になるかもしれない」と新たな資本業務提携への期待を語った。

資本提携した理由について、横山社長は、「離れた地域で店舗を運営する中で、単に書類上だけでつながっているのではなく、しっかりと同じ思い持った結合として連携するために資本提携した。出資額は決して少ない額ではなく、お互いに財布が見える形で信頼関係を深めている」と述べた。

第三者割当による新株式の発行・自己株式の処分(リテールパートナーズにおいては新株式の発行のみ)を実施する。

アークスは、第三者割当による新株式発行、自己株式の処分を実施し、バローHD、リテールパートナーズに対してそれぞれ普通株式133万5000株(第三者割当後の発行済株式総数(自己株式を除く)に対する所有割合2.32%ずつを割り当て、バローHD、リテールパートナーズはそれぞれ取得価額32億1600万円で引き受ける。

バローHDは、第三者割当による新株式発行、自己株式の処分を実施し、アークス、リテールパートナーズに対してそれぞれ普通株式126万株(第三者割当後の発行済株式総数(自己株式を除く)に対する所有割合2.35%ずつを割り当て、アークス、リテールパートナーズはそれぞれ取得価額32億1800万円で引き受ける。

リテールパートナーズは、第三者割当による新株式発行を実施し、アークス、バローHDに対してそれぞれ普通株式313万6400株(第三者割当後の発行済株式総数(自己株式を除く)に対する所有割合6.72%ずつを割り当て、アークス、バローホールディングスはそれぞれ取得価額32億1700万円で引き受ける。

田中社長は、「取引先に対しても、しっかりと書面だけでない提携関係を進めていることを理解してもらうために資本提携を決めた。資本提携により、アークスとバローが当社の筆頭株主になるが、結果論であり、筆頭株主を意識して決定した出資比率ではない」と述べた。

今後のM&Aの方針について、横山社長は、「救済的なM&Aはうまくいかないので、これまでもやっていない。基本的にはスキルを持った仲間とやっていきたい」と述べた。

田代社長は、「M&Aは必要な成長戦略だ。いまは基軸がないが、今後、基軸が必要となる。ただ、何でもいい駆け込み寺的なことは、いまのところ考えていない」と語った。

田中社長は、「全国の連携は新日本スーパーマーケット同盟のような枠組みが必要だが、個別地域の事業会社単位ではM&Aによる経営統合が有効だ。地方の過当競争をなくし、従業員の給料を上げるには、まず企業数を減らすことが必要だ。救済的なM&Aについては、アークスとバローの判断も得ながら検討していきたい」と述べた。

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