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セブン&アイ/井阪社長「セブンイレブン改革で3つの方針」表明、新規出店抑制

2019年04月05日 17:20 / 経営

セブン&アイ・ホールディングスの井阪隆一社長は4月4日、傘下のセブン-イレブン・ジャパンの社長交代記者会見で、出店政策を見直し既存店投資を強化する事業構造改革や、24時間営業について個店ごとに柔軟に対応するといった、セブン-イレブンの改革の方向性を説明した。以下、会見の要旨を掲載する。

<井阪社長>
井阪社長

国内コンビニエンスストアを取り巻く環境は、大きな変化の渦中にある。社会構造の変化のほか技術革新を背景としたさまざまなサービスの向上、厳しい雇用環境、そしてお客様の価値観の変化など、市場構造自体が根本的な変化をしている状況だ。こうした環境認識を基盤に、まず今後のセブン-イレブン改革の方針を3点、説明する。

■事業構造改革

第1に事業構造改革がある。事業構造改革は3点ある。第1に、新規出店の在り方を抜本的に見直す。従来以上に立地をきめ細かく精査し、新店の出店基準を厳格に運用することで、出店数といった量ではなく徹底的に質を追求して出店の精度を高めていく。具体的には2019年度は、出店を850店、前年より500店以上抑制した形ですすめる。閉店も不採算店の立地移転を含めて750店するなど、これまで以上に1店舗1店舗の経営基盤を強化する。

今後の人口動向・人口動態を勘案し積極的に出店するエリアを精査し、提供する商品やサービスを見直していく。営業時間についても24時間短縮したお店の実証実験を踏まえて、柔軟に対応したい。

構造改革の2つめは、既存店支援の強化だ。今期は既存店の成長に資する設備投資をより一層、積極的に行っていく。具体的には、年間の総投資額の約6割を新店の出店投資に傾けてきたが、今期以降は、既存店投資にウエイトを置いて、2019年度については6割を超える設備投資を既存店に行いと思う。セルフレジ、新たな技術を活用した新検品システム、AI革新といったIoTやAIなどの先進テクノロジーを積極的に導入する。
 
3つ目の構造改革は、セブン‐イレブン・ジャパン本社の構造改革だ。店舗開発チームや会計業務など本社経費の構造改革もスピード感をもって進めていく。このような改革を通じて、基本である地域のお客と一緒に事業を育んでもらうフランチャイズの基本使命をより強い形で具現化していく。

■ビジネスモデルの再点検

2つ目の方針は、ビジネスモデルの再点検だ。今般、心配をかけている24時間営業は、フランチャイズチェーン本部としては、真摯に受け止め、これまでの実績に拘泥することなく、立地・個店ごとの状況に応じて、柔軟かつきめ細やかな対応をしたい。

24時間営業はセブンイレブンのビジネスモデルの根幹をなしてきたことは事実だ。従って、何の検証もせずに、拙速にこれを変えることは加盟店の生活の基盤を脅かす懸念に加え、お客や取引先との間で長きにわたって築いてきた信頼関係やブランドを既存するリスクもある。

一方で、社会構造変化の真っただ中で、今後は一律に考えるのではなく、立地や商圏など1店舗1店舗の状況を見極め柔軟な対応を考えたいと思う。加盟店との関係性も今一度、地域社会の生活の向上のために一緒に共同事業を営んでいるんだということを理解した上で、お客の生活の質の向上に資する、それに社会的な存在意義をお互いに感じられるような形で努力を一緒にしていきたい。

さまざまな社会課題の解決のために、サプライチェーン全体、専用の惣菜工場や物流センター、取引先と一緒にこれからも、コンビニエンスストア事業の全体最適化を図っていきたい。

今期、ホールディングスに新たに設置した「グループ商品戦略本部」を軸に、ムダ・ムラを排除した全体最適に資する新たなビジネスモデルを率先して創設する。

■「加盟店に寄り添う」創業以来の精神を発展させる

3つ目の方針は、「加盟店の皆さんに寄り添い続ける」という創業以来の精神をさらに発展させていく。具体的には、まだ話せる段階ではないが、加盟店オーナーの満足度向上につながり、一人ひとりが一層、安心して店舗運営をしていただけるような新しい施策、環境整備の検討を進めていきたい。加盟店の皆様と一緒に、未来志向で次のステップへ進んでいきたいと考えている。

いま申し上げた3つの方針は、ほんの一部だと思うが、この3つの方針に、優先順位の軸足を置いて、スピードをもって実行性を上げていくためには、より強固な経営体制が必要だと判断するに至り、この度のトップ人事もその一環となる。

■新経営体制へ移行した理由

新たな経営陣には、より細やかな現場改革と事業そのものの効率化を推進する、その両立が求められる。また同時に、新しい時代のコンビニのビジネスモデルを創出するという非常に難易度の高い課題を、いまの副社長である永松を社長、古屋が会長として全面的にバックアップするという布陣が最適だとの結論に至った。

昨日来、24時間営業問題とトップ人事の関連性がクローズアップされているが、今回の人事の背景にあるのは24時間営業のことだけではない。流通業というのは、お客様と直接、接する産業だ。お客さまの声を聞いて、困りごとや悩みにスピーディーに応えるのが、流通業の使命であり、それが発展の原資だと思っている。

ところが、恥ずかしい話だが、この1年間を俯瞰すると、現場の情報がなかなか上がりにくくなっている事象が少なからずあった。今申し上げた方針の実現に向けた経営体制、これをしっかりするためにも今回の経営体制がベストだというメディアにご理解賜りたいと思う。

私は2010年にセブン-イレブン・ジャパンの社長に就任して以来、私を社長、古屋を副社長として7年間に渡り、「近くて便利なお店」といういままでの「開いてて良かった」という時代から、違うパラダイムにシフトして一緒にやってきた。

(古屋は)非常に力強いリーダーシップとコミュニケーションにおいては発信力の素晴らしい人物だ。また、古屋が社長だったからこそ、いままでタッチしたことのないチャージの1%減額というところに踏み込めたと考えている。

いま古屋は、日本フランチャイズチェーン協会の副会長とコンビニ部会長という公職の役割を担っている。今後は、会長職として、公職と共に永松新体制を私と一緒に全面的にサポートしていくことで、しっかり同意を得ている。

永松は、セブン-イレブン・ジャパン入社以来、店舗オペレーション部門を長く担当し、ゾーンマネージャーまで務めた。また、人事部門の責任者を歴任した。その後、ニッセンホールディングスの再建に副社長として取り組み、事業構造改革の先頭に立って再建の基礎作りの力を注いでくれた。

HDの人事企画部長に就いてからは、率先して働き方改革に取り組み、まい進してきた。事業構造改革のみならず、人事・教育・労務管理に精通していることから、現在の加盟店オーナーの悩みに十分応えると共に、現場・社員の声を適切に吸い上げることができる最適な資質を有していると考えている。

今般、セブン-イレブン・ジャパンが未来志向の事業革新を推進していく上で、こうしたキャリアが十分に発揮されると信じている。

最後に、私を含めてセブン&アイグループとしても、新経営体制を強力にサポートしていくと共に、社内外の優れた人材・知識・ノウハウを結集して、セブン-イレブン・ジャパンに新たな活力を生み出していきたい。

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