セブンイレブン・ファミマ・ローソン/2025年度上期はどう攻める?各社の商品戦略
2025年03月28日 14:49 / 商品
コンビニ大手3社の2025年度上期(3~8月)における商品戦略の大枠が固まった。それぞれアプローチは違えども、来店機会を創出し、新規顧客獲得とリピートにつなげたいという思惑は同じ。品質に加え、コスパやタイパ、ワクワク感を意識した各社の上期方針をまとめた。
セブンは定番・基本商品の磨きこみに注力
セブンーイレブン・ジャパンは2024年度の下期、伸び悩む客数回復を目指し「うれしい値!宣言」を実施。手頃な価格帯の商品「うれしい値!」の訴求を強化した。
<うれしい値!の商品群>
それが奏功し、値ごろ感が伝わった商品が伸長。その結果、売上や客数が改善し、新たに若年層の掘り起こしにもなったという。
こうした松竹梅で「梅」にあたる商品群の強化を経て、2025年度上期は、軸足を「竹」に移す。セブン本来の強みとする定番商品や基本商品の品質を味にこだわって磨きこみ、価値訴求を強化する。
例えば「赤飯おこわおむすび」や「こだわりおむすび」といった定番のおむすびを、製造工程の見直しなどによりさらに改良を加える。あるいは、以前から展開しているシュークリームも昨今のトレンドなどを踏まえて、ホイップやクリーム比率を見直してミルキーなホイップがたっぷり入ったものに進化させる。
セブンーイレブン執行役員商品本部長の羽石奈緒氏は「我々の強みの1つが、全国にオリジナルフレッシュフード製造工場があること。我々の商品だけを専用に作っている取引先の工場が154拠点あり、お客様のニーズにしっかりと向き合って価値を高める土台となっており、品質向上ができる背景となっている」と述べる。
同社ではこれらの製造工場で定番商品の磨きこみを進めつつ、カプセル玩具の提供や、コンビニでは初となるアップル傘下のオーディオブランド「Beats(ビーツ)」の取り扱いなどで、「ワクワク感や楽しさ」の演出にも取り組む。
また、今後はレジカウンターでメロンパンやクロワッサンなどのベーカリーや、専用マシンによる紅茶「セブンカフェ ティー」を導入し、レジ周りのファストフードも強化していく計画だ。
ファミマは多様な施策の連発で誘客狙う
ファミリーマートでは多種多様なキャンペーンを実施することで、生活者の来店機会を増やしていく。
「わざわざお客様が店舗に足を運びたくなるような、とがったコミュニケーションをすべてのメディアで発信する」。
同社のエグゼクティブ・ディレクターCMO兼マーケティング本部長CCROの足立光氏がこう述べるように、おむすびではさっそく大谷翔平選手をアンバサダーに起用し積極的なプロモーションを開始した。
パンカテゴリでは、3月25日に「白生(しろなま)パン」3種類を発売し、俳優の吉田鋼太郎さんと八木莉可子さんを起用したCM放映を開始した。
さらに同日にはふるさと納税サービス「ファミマふるさと納税」をローンチ。ファミマのアプリ「ファミペイ」を活用して、店内商品を返礼品として店頭で受け渡すという独自の手法で参入し、先行する他社との違いを鮮明に打ち出した。
また、ECでも新たに「ファミマオンライン」を3月6日に立ち上げるなど、さまざまな施策を次々に打ち出す。
足立氏は「さまざまな施策で話題化することで、ファミリーマートに元気なイメージを持っていただきたい」と述べており、3月からのファミマの状況はまさにその言葉を具現化していると言える。
ローソンは5年ぶりの刷新でPBを強化
ローソンはプライベートブランド(PB)を刷新し、新たに「3つ星ローソン」を開始する。PB刷新は5年ぶりとなる。
現在のPBの約95%と大半の約1000アイテムを「3つ星ローソン」のブランド名に統一。「わかりやすいパッケージデザイン」に改良することで、ローソンでしか買えないPBの知名度を向上させる狙い。
予定では、まず6月中を目途に弁当・調理パン・デリカなどデイリー系商品から「3つ星ローソン」に切り替える。次に10月までに日配食品・冷凍食品・日用品といったドライ系商品をリニューアルする。
ローソン商品本部長の藤井均氏は「新PB活用により、トライアルに加え、リピートを拡大したい。人口が減少する日本で、お客様一人一人との長いお付き合いが重要だ」と狙いを語る。
「3つ星ローソン」では、商品名が見やすいように文字の大きさや濃さを改良。さらにパッケージカラーは商品ジャンルに合わせて、識別しやすい色を採用している。
PB商品の中身については、仕様を工夫することによってタイパやコスパといった需要に対応する。専門店の味という品質を維持しながら、コンビニ価格で購入できるおにぎりやスイーツといった商品を今後投入していく方針だ。
物価が高騰し、実質賃金が上がらない中、生活者をいかにコンビニに呼び込むか。選ばれるコンビニを目指し、割安なPBの投入やさらなるおいしさの磨き上げなど、各社はしのぎを削っている。
取材・執筆 鹿野島智子、比木暁
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