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ヨーク/首都圏出店を強化、グループシナジーで価格の二極化に対応

2023年01月10日 14:00 / 流通最前線トップインタビュー

ヨークは2020年、ヨークマートからヨークへ商号変更し、イトーヨーカ堂のイトーヨーカドー食品館およびザ・プライス、フォーキャストが展開するコンフォートマーケットを統合した。現在、首都圏での店舗展開を強化し、新たな店舗フォーマットが成果をあげている。若い世代を取り込み、上質・手頃な価格の二極の需要に対応する店舗づくりを推進するヨークの大竹正人社長に統合の成果とこれからの成長戦略を聞いた。
取材:12月8日 於:ヨーク本社(テレコムセンタービル)

ヨーク/首都圏出店を強化、グループシナジーで価格の二極化に対応

都市型モデル店は売り上げが計画以上に好調

――統合の手応えについて教えてください。

大竹 統合によりスーパーマーケットとして進化できるのではないかと、三つの会社が一つになったわけですが、実際にやってみますと、旧イトーヨーカドーの食品館、ザ・プライス、ヨークマート、商圏の特性で非常に(ビジネス手法が)違うなというのが、第一に私が感じたところでした。立地によって営業手法の違いがありました。そこで、統合にあたってまず象徴的な店を作ろうということで、「ヨークフーズ新宿富久店」(東京都新宿区)という大型店を刷新しました。

――新宿富久店改装の効果とは。

大竹 大きくレイアウトも変えながら、やはり首都圏は中食需要が見込めることから、総菜の上質化を進めました。外国人も非常に多いエリアのため、そういった客層に好まれるメニューの開発などに取り組みました。この店は都市型大型店として売り上げが好調で、計画以上に推移しています。同時に店舗開発については都市型小型店、中型店もフォーマットづくりを推進してまいりました。

――小型店の開発について教えてください。

大竹 都市型小型店モデルとして改装した「ヨークフーズ早稲田店」(東京都新宿区)ですが、こちらの開発はかなり難しかったです。今まで私自身経験のないような2層で約653m2という限られた売場面積の中で、顧客満足度の高いMDをそろえ、作業効率の良い動線を設計するという難しさがありました。

例えばベーカリーの自社ブランド商品は、店内製造するには面積の余裕がないため、店舗近隣のサテライトキッチンから焼き立てを納品しています。また、商品の搬入口からの動線も非常に狭くて複雑なのですが、納入頻度の高い商品とそうでないものの搬入動線を分けるなど工夫を凝らしています。スピーディーな会計のためセルフレジも強化し、生産性を向上させています。

――小型店ならではの工夫が求められるのですね。

大竹 スタッフの人員の配置も工夫が重要です。小型店では標準店、大型店のように部門の縦割りでは対応できないですね。店長の下に、部門を超えて活動できるスタッフをそろえ、例えば値下げの作業は、部門を超えて実施しています。おかげさまで、小型店とは思えないような、全社平均をはるかに上回る生産性となっています。なおかつ、背高什器の活用や外部で製造した総菜などを入れることで、限られたスペースでも充実した品ぞろえを実現しています。この店も売り上げが好調で、計画以上に推移しております。

シェルガーデンと初のコラボ店舗を開発

<都市型店舗モデル構築へ>
都市型店舗モデル構築へ

――中型店の開発について教えてください。

大竹 中型店のモデルとなるのが、「ヨークフーズ中野店」を大幅に改装した「ヨークフーズwithザ・ガーデン自由が丘 中野店」(東京都中野区)です。こちらは、当社の持つMD力に加え、セブン&アイグループの商品力を総合した店舗です。各社の人気のある強力な商品を導入し、初めてシェルガーデンと協業した店舗でもあります。

<ヨークフーズwithザ・ガーデン自由が丘 中野店>
ヨークフーズwithザ・ガーデン自由が丘 中野店

――中野店の成果はいかがですか。

大竹 おかげさまで、この店舗も好調です。自社開発したオリジナル商品や7プレミアム商品、シェルガーデンの商流を活用した質の高い商品を組み合わせ、商品価格の需要の二極化に対応することを目指して作った店舗で、商圏調査、潜在ニーズ含めて仮説を立て、出店したのですが、改装前に比べ、売り上げが2桁以上の伸びを示しています。これで、大型店、中型店、小型店のモデルができあがったと思います。

<シェルガーデンの商流を活用した質の高い商品もそろう>
シェルガーデンの商流を活用した質の高い商品

――郊外の店舗はいかがですか。

大竹 今、課題となっているのが郊外の小型店の在り方です。都心の場合は強烈な競合店リスクは少ないのですが、郊外では競合対策が難しいですね。郊外型店舗の開発は、旧イトーヨーカ堂の「ザ・プライス」の店舗運営が非常に参考になっています。

<モデル店舗の開発を推進と大竹社長>
モデル店舗の開発を推進と大竹社長

――どのような点を参考にしたのでしょうか。

大竹 「ヨークプライス湘南台店」(神奈川県藤沢市)は、店舗面積が1014m2で、イトーヨーカ堂ザ・プライスの継承店舗です。イトーヨーカ堂のザ・プライス業態というのは、基本的には値段で競争力を出しています。どんなMDでも全方位対応するというよりは、野菜に特化させてグロサリーの値段を出しながら、運営するスタイルです。

もともとザ・プライスのオリジナル商品というのがあったのですが、現在、セブン&アイグループのPB「セブン・ザ・プライス」という形で商品をリニューアルしています。そういった商品を中心に販売して、買いやすい価格の商品を提供しています。

さらに、生産性向上を目指し、棚に高さを出したり、ケース陳列したりと什器に工夫しています。野菜も、それ以外のものも安くて、そして毎日売り切るということで鮮度も上げられる。ここに対してお客様から支持をしていただいていますので、この運営方法を一つの郊外小型店モデルの参考にしたいと思っています。このプライス業態のオペレーション、MDだったら、ヨークの郊外店でも競合に対抗できるのではないかと今実験を進めているところです。

――自社店舗同士で競合の心配はないのでしょうか。

大竹 「ヨークフーズ 藤沢六会店」(神奈川県藤沢市)を刷新した時の例ですが、同一商圏に「ヨークプライス湘南台店」(神奈川県藤沢市)があります。「ヨークフーズ 藤沢六会店」は上質な商品を含めた徹底した提案型、一方、「ヨークプライス湘南台」は、特に野菜が強く、低価格で商品を売り切る店です。同じ商圏でもすみ分けができるという学びになりました。

首都圏戦略で統合した際は、戸惑いも多かったのですが、このように店舗規模、エリアごとにモデルが出来上がりつつあり、このモデルをベースにし、個店個店のマーケット環境を考慮しながら、既存店の活性化、商品の再構成を進めていきたいと考えています。

食品工場などグループ共有インフラを整備

――商品供給を支えるインフラについて教えてください。

大竹 当社では、特に都心店で総菜を強化する方針ですが、小型店では店内製造に限界があります。現在Peace Deli(ピース デリ)というグループ共有の食品製造工場(千葉市緑区)を建設中です。セブン&アイグループ戦略の一環であるグループ食品戦略を推進するため、イトーヨーカ堂・ヨーク・シェルガーデンの首都圏店舗を中心に、食品の商品供給を行うもので、2023年の稼働を目指しています。

――工場以外のインフラはいかがですか。

大竹 閉店した「コンフォートマーケット中延店」(東京都品川区)の厨房(ちゅうぼう)施設を残し、当社専用のサテライトキッチンを運営しています。こちらで製造した弁当などを早稲田店といった都市型店舗に配送しています。やはり、充実した品ぞろえが顧客満足度につながりますので、食品工場、セントラルキッチン、サテライトキッチンというインフラを強化していきます。

――現在、強化しているMDは何でしょうか。

大竹 やはり、総菜ですね。ただ、都市型店舗では、どうしても店内調理に限界があります。インフラ整備とともに、店内調理との連係も図っています。現在、イトーヨーカ堂の日高にあるセントラルキッチンでお弁当のおかずを盛り付け納品、店舗では店内で炊き立ての白米を盛り付けるだけの「カセット弁当」という商品企画に取り組んでいます。

――商品の若年層への訴求について教えてください。

大竹 「ヨークフーズwithザ・ガーデン自由が丘 中野店」などで、効果が上がっているのが、若年層をターゲットにしたスイーツ、総菜などですね。同店で開始した自社開発のオリジナル新商品のフルーツビネガーは、1000円を超える商品ですが、生フルーツを使っている点が珍しく、若いお客様中心に人気で売れています。ただ、日常使いを勘案すると、高品質一辺倒では顧客ニーズに応えられませんから、豚肉、野菜など頻度品の価格も意識しています。

<生フルーツ使用のビネガードリンク>
生フルーツ使用のビネガードリンク

――シェルガーデンと協業したからこその商品調達も実現させていますね。

大竹 シェルガーデンで扱うものは、百貨店で販売しているようなものが多く、沢屋、新宿高野はヨークフーズ単体では仕入れが難しかったと思います。コラボ店だからこそ可能なMDも多いです。シェルガーデンから社員を2人店舗へ派遣してもらっていますし、当社からも商品知識に磨きをかけるため、シェルガーデンへ勉強しに行って、人財育成の面でも連携を強化していきたいと思っています。

――店舗のDXも強化していますね。

大竹 セルフレジの導入など店舗のデジタル化を進めています。コロナ禍を経てクイックな買い物ニーズに応えるため、セルフレジは103店舗中(2022年12月現在)約6割で導入が完了しています。若い方はすぐ使い方になじんでいただいているようです。

また、小型店ではサービスカウンターを置く場所が限られるので、早稲田店ではデジタルサービスカウンターを取り入れました。問い合わせに従業員がリアルで接客する業務と3Dアバターで完結できるカウンター業務を区分けしました。従業員が対応する場合は腕に装着したスマートウオッチに振動が入り、連携したスマートフォンで一次応答、通知が届いたスタッフが、すぐにお客様の元に伺いお待たせさせないよう素早く対応しています。現在、合計8店舗で実施しています。アバターが、タッチパネルで売場・商品・施設などを案内します。社内の管理部門のシステム化も進め、従業員の作業負担軽減、業務の効率化を実現できるかという視点で施策を進めております。

――ネットスーパー導入は検討していますか。

大竹 現在、当社ではネットスーパーは運営していません。その代わり、ダークストア専業のスタートアップ「OniGO」(オニゴー、東京都目黒区)と「コンフォートマーケット西馬込店」(東京都大田区)で、近郊商圏の約1.5kmに住む顧客に、注文から最短10分で届けるクイック宅配サービスを開始しました。

アプリまたはWEBで、手軽に注文できます。現在、西馬込店のほか、新宿富久店、中野店の計3店舗まで拡大しています。OniGOの体制が整い次第、需要が見込めるエリアでは積極的に導入していきたいと思っています。

店舗の技術・女性幹部候補など人財育成を強化

――このような改革を支える人財教育も重要ですね。

大竹 商品開発や、それを運営していくさまざまな領域の人財教育を推進しています。「ヨークフーズwithザ・ガーデン自由が丘 中野店」では、ヨークベニマルの「レストランデリ」を導入していますが、家庭では作りづらい手間をかけたおいしい総菜が人気です。ヨークベニマルの責任者に直接指導を受けたり、当社の担当者に1カ月同社に研修に行ってもらったりと、グループ連携でレベルの高い商品づくりを行っています。

<ヨークベニマルの「レストランデリ」を導入>
ヨークベニマルの「レストランデリ」を導入

ヨークベニマルとの連携では、同社の作業改善の研修は素晴らしく、毎回当社でも2人ぐらい派遣しています。卒業生はのべ40人を超えております。トヨタのカイゼンを取り入れた研修で、卒業生から店長になったスタッフもいます。商品、オペレーション、さまざまな点で情報を共有する中で、グループのシナジーが生まれています。

――そのほかの教育制度について教えてください。

大竹 コロナ禍でリアルでの研修が減ってしまいましたが、これだけデジタルが進んでも、人の技術力は、店舗の差別化につながります。例えば、刺し身をきれいに切れる人がいる店は、顧客に支持されます。当社では年1回技術コンクールを開催しています。どんなにデジタルが発達しても、技術力は大事にしないといけないと思っています。

<人財教育を強化していると大竹氏>
人財教育を強化

――女性活躍のための施策を教えてください。

大竹 2021年から「キャリア形成プログラム」という女性専用の研修を実施しています。第1回の受講生から、2022年には副店長が誕生しました。また、副店長研修という、各部門のマネジャーが副店長、店長、将来の幹部候補としてキャリアアップするための教育も行っています。来年あたりには、店長になる女性がでてくるのではないかと期待しています。

――スーパーに女性の感性は欠かせないと。

大竹 スーパーマーケットには、女性の感性が絶対必要です。本部スタッフでも、女性は少ないですし、女性幹部社員の育成は重要です。今やるべき教育が明確になってきて、現在の教育体系を維持、継続、進化させていかねばならないと思っています。人を育てる企業風土を作っていきます。

――パート従業員の就業調整は事業に影響がありますか。

大竹 いわゆる「103万円の壁」、「106万円の壁」は事業に大きく影響しています。特に年末になると、収入を抑えようと、労働時間を調整するスタッフが増えます。そうすると、シフト調整が難しくなり、現場の正社員にしわ寄せがいきます。少子高齢化で働く人が減る中、働く人の事情をもっと考慮し、税制面から変わっていってほしいと思います。

――2023年取り組みたい施策を教えてください。

大竹 店舗の規模、出店エリアに合った店舗フォーマットが出来上がりつつあるので、既存店のブラッシュアップを進めていきます。MDの構成の見直しで済む店舗もあれば、さらなる活性化が必要な店舗もありますので、これは個店ごとに計画的にやっていきます。

ローコストオペレーションも強化していきます。単純に人員を減らすのではなく、陳列方法の工夫による工数削減、部門間の垣根を越えた店舗運営の仕組みづくりも進めたいですね。グループにさまざまな会社があるので、各社のオペレーションの取り組みを知ることで、いろいろな気づきがあるのも、グループシナジーですね。

――座右の銘を教えてください。

大竹 上杉鷹山の「為せば成る 為さねば成らぬ何事も 成らぬは人の 為さぬなりけり」です。2023年も「為せば成る」の精神で、各店舗フォーマットを磨き上げ、さらなる成長を目指します。

(取材・執筆 鹿野島 智子)

<大竹正人社長>
大竹正人社長

■大竹正人社長略歴
1981年3月:ヨークベニマル入社
2000年2月:同社デイリー部シニアスーパーバイザー
2003年2月:同社物流事業部長
2004年5月:同社執行役員
2005年6月:同社食品事業部長兼物流事業部長
2006年5月:同社常務執行役員
2006年5月:ライフフーズ取締役
2011年2月:同社茨城南ゾーン ゾーンマネジャー
2012年2月:セブン&アイ・ホールディングス グループMD改革プロジェクトリーダー
2014年3月:ヨークマート 代表取締役社長
2020年6月:ヨーク 代表取締役社長(現職)

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